「車椅子ユーザーが大学に通うための問題点や課題,困難を乗り越えた方法」第3段

 前回の記事では、車椅子ユーザーAさんから大学での授業を受ける際の困難や環境面で苦労された事など、聞いた内容をお伝えしました。今回はその最終章として、実習に関する事前準備や苦労した点、工夫した点、国家試験の勉強法などを掲載します。これから大学進学を目指す方へ、事前にしておいたほうが良いという準備などに焦点を当てていきます。この記事を通じて、新たな発見やみなさんの疑問点に寄り添えたら幸いです。

【Aさんプロフィール】

  • 性別:女性
  • 年齢:20代
  • 障害名:脳性マヒ
  • 電動車いすユーザー
  • 高等養護学校卒業後、大学進学し、社会福祉士、精神保健福祉士の国家資格を取得。現在一般企業に就職し、フォーラムなどでの講演活動も行っている。

第2部作の記事をご覧になりたい方

第2部作

授業での実習について、実習先で困る事は⁉

理解を得て、受け入れてくれる実習先を探すこと。私の大学の場合、先生方が探してくれてここに行って下さいと割り振られます。遠い場所が多くタクシー利用をしたり朝5時に起きて隣の市まで行ったりしていました。

タクシーは実費ですか⁉

実費でした。駅から実習先までタクシー利用したりしていました。いま考えるとすごい金額だったかなと思います。その時は行かないといけないし、そのために大学に入ったので、お金とかあまり気にしなかったかもしれません。」

タクシーの予約を忘れたなどの失敗はありましたか⁉

毎日だったのでまとめて予約していました。タクシーではなく地下鉄で行く実習先もありました。遅刻したくないけど地下鉄だと1本遅らせないといけないと言われたのに私が1本見送る地下鉄に乗る車いすの方もいて、なぜなのか聞いたこともあります。実習を受け入れてくれているのに遅刻するわけにはいかないと朝早く起きて頑張っていました。

タクシーの予約について、まとまった期間の予約が難しい事はありましたか⁉

以前から利用していた福祉タクシーに相談して同じ会社さんにお願いしました。予約が難しいとか、なかったです。」

大学の先生側でのタクシー手配などのサポートを手伝ってくれたりするようなシステムはありましたか⁉

私の場合は知り合いがいたので自分で手配しました。」

実習先の環境で困ったことはありましたか⁉

「理解があったのでそんなに困ったことはなかったです。バリアフリーな面もありました。」

記録物などを書くときに書きにくい場面などありましたか⁉

学校で配布されたものに記入していました。特になかったです。」

書きにくい状況があったら困るので、必ずこれを持参したというものはありますか⁉

日誌は帰宅してから記入していました。iPadを持参したりもしましたが、容量の問題などで後半は手書きしていました。」

学校から帰ってきてヘルパーの調整などはどうしていましたか⁉

普段の決まったルーティン以外の変更は都度相談をしたり、学生だということを理解してくれていた事業所だったのでキャンセルしても良い、と飲みに行くなどの理由でキャンセルしたりもしていました。24時間、事業所がやっていると思い夜中に電話をかけたこともありました。常識の範囲内で連絡してくださいと言われたこともあります。」

いま大学生活を振り返って不便だったことや、もっとこうだったら良かったのにと思うことはありますか⁉

「大学生活はすごく友達に恵まれていたのであんまり不自由はなかったです。」

現在、大学の友達と関係は続いている方はいますか⁉

子供が生まれたり、結婚したりで会うのが難しかったりしますがインスタなどでつながっていたり連絡を取っています」

これから大学進学へ目指す方へ、事前にこれだけはやっておいたほうが良いということがあれば教えて下さい‼

「最初のうちは友達を作ることが一番良いと思いました。障害があるから、とか特別支援学校から進学だから、とか思わないで。そう思っちゃうと周りが自分と違う人って思って構えちゃうから。入学前からつながるコミュニティなどで先にコミュニケーションを取って実際に会う前に車いすユーザーであることを開示したりするのもいいかもしれません。」

養護学校だけで過ごしてきた方や友達の作り方がわからない方へ、アドバイスがあれば教えて下さい‼

過去の私は、自分から輪に入ることが苦手で、素の自分を出せずにいて、友達の作り方もわからなかったんです。でも、オープンキャンパスや見学の時に車椅子の先輩に出会いました。その際に、先輩から、「大学生活を送るには、友達を作ったほうがいいよ」と言われ、頑張って積極的にいろんな人に自分から話しかけに行きました。積極的に話しかけにいって自分の障害のことも聞いてくれた周りがいて、怖くても伝えられたことと、大学生にもなったら、みんな大人で理解がありました。最初の人間関係に失敗しないよう、明るい人を装ったりなどもしました。ずっといつも一緒にいる友達じゃなくてもいい、友達のグループに入れなくてもいいから、みんなと顔見知りになるぐらいの気持ちでいました。皆から協力してもらえるよう、おはようとか声をかけるだけの関係でも繋がりをもてるような努力をしました。そうしたことで友達が増えました。

まだその大学に有償ボランティアのような在学中に協力してくれるような制度はあるのでしょうか⁉

まだあると思います。その大学は支援が必要な生徒をサポ-トしましょう、という流れになっているみたいです。」

社会福祉士の受験の際に努力したことを教えて下さい‼

家の目に入るところに暗記問題を張って覚える努力や、動画をみて勉強しました。苦手なことも五感を駆使できるような自分にあった勉強方法を見つけ努力しました。」

自分にあった勉強方法など、どう探したのですか⁉

「いろいろ試しました。周りに人にどういう勉強方法しているか聞きました。その中で自分に合ったもの、たとえば私の場合は、感情を揺さぶられたりするような内容は忘れないものなので、むりやり関連付けて覚えたり、語呂合わせで覚えることや目で覚えるのが苦手なら耳で覚えるように音読をしたり、自分の声で録音して勉強をしました。

今後どんな自分になっていきたいですか⁉

「今、している在宅での仕事を続けながら、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を活かせられる、人と関われるような仕事も続けていきたいです。

今回の記事では、大学の実習に関する事前準備や苦労した点、工夫した点、国家試験の勉強法、具体的な内容ついてお伝えいたしました。

スタッフOの感想
 障害を抱え、電動車いすを使いながら大学を卒業され「社会福祉士」「精神保健福祉士」を取得したAさんの挑戦に、大きな感動を覚えました。
キャンパス内での移動や教室でのスペースの問題、授業の進行に合わせたノートの取りにくさは、障害を持つ学生が日常的に直面する課題だと感じます。また、頼れる人や支えを自然に受け入れることは意外と難しいと私は思います。
毎日の移動や学習の中でこうした困難が積み重なり、気持ちがすり減ってしまう瞬間があるはずです。それでもAさんが諦めずに、工夫を重ね、前向きに挑んでいく姿を聞き、大きな勇気を与えてくれました。
インタビューをさせていただいた私も、周囲からの支えの大切さを実感しながら、彼女のように他者を支えられる存在でありたいと改めて思いました。

スタッフMの感想
 近年、障害を持っていても大学に通っている方が増えてきたが僕自身は直接聞いたことがなく、今回のインタビューを通し貴重な話を聞くことができた。
 インタビューを通して、Aさんは自分の苦手なことをどのように補っていくか考え努力を重ね夢を叶えようとする実直さに私は心が熱くなりました。
このインタビュー記事を読まれた方の中でこれから大学へ進学を考えていましたら、この記事が一つの道しるべになっていただけたら幸いです。

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