1.はじめに
2025年9月29日、札幌市かでる2.7にて『災害に備えた地域での支え合い研修会』に参加しました。
この研修は、地震や豪雨などの大規模災害が発生した際に、障がいのある方や高齢者など避難に支援が必要な方々を地域全体でどう支えていくかを考える場です。行政職員、福祉専門職、町内会役員、そして障がい当事者本人やその家族が集まり、実際の取り組みや課題を共有しました。
2.プログラム概要
(1) 開会挨拶
札幌市保健福祉局から、災害時の弱者支援の重要性が述べられました。特に「個別避難計画の作成」や「地域での助け合いの仕組み」が今後ますます必要になることが強調されました。
(2) 基調講演
■講師:一般社団法人 Wellbe Design 理事長 篠原辰二 氏
- 災害対応は「避難そのもの」から「避難後の生活の質」へと重点が移っている
- 障がいのある方の災害時死亡率は高く、在宅避難や車中避難など、多様な避難形態への配慮が不可欠
- 平時の地域づくりこそが、災害時の命を守る基盤になる
(3) 行政の取り組み紹介
札幌市が進める避難行動要支援者名簿や安心のまちコーディネート事業が紹介され、町内会と福祉の専門職が協働していくことの重要性が示されました。
(4) 実践報告
- 相談支援専門員による避難支援の準備
- 町内会による地域ぐるみの訓練
- 障がい当事者からの「実際に困ること」や「支援があって助かった経験」など
現場からのリアルな声は、参加者に大きな気づきを与えました。
3.地域の自治機能から見た防災の意義
今回の研修を通じて、防災を地域の自治機能という視点で考えると、次の3つが特に大切だと教わりました。
- 親睦機能(人と人とのつながり)
普段から顔見知りになり、声をかけ合える関係性をつくっておくこと。災害時にすぐ「大丈夫?」と確認することが安心感につながります。 - 環境・施設維持機能(地域の暮らしを守る力)
公園や集会所、防災倉庫など、避難場所となる施設や備蓄を地域で管理・点検しておくこと。障がいのある方も安心して使える環境を整えることが求められます。 - 問題対処機能(非常時に力を合わせる仕組み)
実際に災害が起きた時、誰が安否確認をし、誰が避難を手助けするのか。役割分担や協力体制を事前に話し合っておくことが、混乱を防ぐポイントになります。
この3つの機能がそろうことで、制度や計画だけでは守れない一人ひとりの命と生活を地域で支えることができます。
4.研修を通じて得られた学び
- 防災は特別な活動ではなく、日常の延長にあるもの
- 福祉専門職や行政だけに頼るのではなく、町内会や住民が持つ自治の力を生かすことが大切
- 当事者の声を聞きながら、「支援する側・される側」という関係を超え、共に地域をつくる姿勢が求められる
5.おわりに
今回の研修で特に印象に残ったのは、「災害は避けられないが、被害を最小限にできるのは平時のつながり次第」という点です。障がいのある方や高齢者にとって、いざという時に助けを求められる関係性が地域にあることは何よりの安心につながります。
また、避難支援を「制度」や「計画」だけで終わらせるのではなく、町内会の声かけなど日常の顔の見える関係づくりが不可欠だと改めて実感しました。専門職・行政・地域住民・当事者がそれぞれの役割を果たしながら、無理なく協力できる仕組みづくりが、今後ますます大切になっていくと思います。
この研修で得られた学びを、「日々の生活や仕事の中でどう活かしていけるか」を考え続けたいと感じました。
合同会社フィジード 大内、渡邊